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日々の破片

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2007-05-27

_ そんな夷荻を待ちきれない

イテキがIME2007に登録されてない。苦労して(イが問題)やっと夷荻と入力して、ついでにMSに登録情報を送ったが、アマゾン検索しても出てこない。ところがグーグルさがせばちゃんと出てくる。タッチの差で絶版かとも思ったが、おれが間違ってるに違いないと、グーグル検索した結果から見つけた作家の名前でアマゾンを検索したらちゃんと出てきた。

夷狄を待ちながら (集英社文庫)(J・M・クッツェー/土岐 恒二)

夷狄かよ。

こっちも単語登録してMSに送信。夷荻は削除。しかし、誤入力した登録情報ってちゃんと捨ててくれるんだろうな(削除情報がMSに送られている様子は無い)? ちなみに、大辞林(最後の最後になってから引いているのは重いからだ)では夷狄というか、言われてみればエビスエビスなんだからジュウのテキが夷狄のテキに決まっていた(字形で判断するのは自分で自分をだましてしまうので良くないね)。

という不条理に満ち、次の瞬間には何が起きるかわからない、実存性の作家がアフリカの南の果てに生き残ったかのようなクッツェーの作品をゴールデンウィークに読んで、そのままにしてたから、一応、感想文を書いておく。

ノーベル賞のうち、特に文学賞って、言葉の越えられない壁があるので、読みそこなうことは多い(シンガーとか手元に確保してあっても読んでない作家の作品もあるし)。でも、仮にもノーベル賞なわけだから、やはり読んではおきたい(これはでも、受賞作じゃないけどな)。という程度の気持ちで手に取ったが、ひさびさに読みとおすのが苦痛な文学に当たってしまった(とは言え、読了はしたもんだが)。

時は17世紀、場所はアフリカの南、と考えたほうがすっきりするのだが、なぜかアマゾン書評ではローマ帝国の話になっているが、なぜだろうか? ティベリウス帝の話とかは出てこないと記憶してるが、いずれにしても、寓話は寓話、時も場所も関係ないといえば関係ない。

国家の意思と異なる意思を持つ個人に対して権力が理不尽な改心を迫るという意味では、1984の仲間であるし、

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)(ジョージ・オーウェル/新庄 哲夫/George Orwell)

自分の場所ではない場所で、自分のありようを否定されて異なる生物に変形させられていく物語という意味ではポールボウルズの仲間とも言える。

優雅な獲物(ポール ボウルズ/四方田 犬彦)

異国における人間精神の孤独であれば

ポール・ニザン著作集〈〔第1期 第1〕〉アデンアラビア (1966年) (晶文選書)(ポール・ニザン/篠田 浩一郎)

単なるヒヒオヤジの下劣なセンチメンタルなルサンチマンを虜囚となった夷狄の女性にぶつける話と読めば(前半部だけだけどな)、

わが悲しき娼婦たちの思い出 (Obra de Garc〓a M〓rquez (2004))(ガブリエル・ガルシア=マルケス/木村 榮一)

(読んでないが、h.yamagataの書評を読むとそういう感じだ)

みたいでもある。

でも、結局、何も変わらないという意味では、

紅い花 (小学館文庫)(つげ 義春)

相変わらず辺境に暮らしているのです。

物語られる物語は、どうとでも色づけ可能な物語らしい物語だ。

帝国の辺境で文官として長いこと駐在している執政官が主人公だ。よく太った老人である。家柄は良いため、無能でも官職を持て、生来の孤立癖とその出自と職能に対する微妙な後ろめたさから自らをこの地への流刑囚のような立場とみなすことで心の平穏を得ている。

HELLSING 6 (ヤングキングコミックス)(平野 耕太)

ある意味、ペンウッド卿ですな。

そんな辺境の地に軍隊が到着する。サングラスをかけたゾル大佐という特務が率いる部隊だ。

仮面ライダー特別版 ショッカーVol.1 (Kodansha official file magazine)(東映/石森プロ)

サングラスではなく眼帯だったような気がするが、もちろん、怒ると狼に変身し、人を食い殺す(デスハンターのKのほうがふさわしいのだが、読んでいる間、ずっと岡田真澄がゾル大佐役をやっていたのでしょうがない。名前も同じだし)。

夷狄が帝国をおびやかしているので、掃討しに来たのだ。しかし、そんな兆候はどこにもない。だが、首都ではその話で混乱中だ。すべての帝国民が夷狄に対して恐怖でおびえているのだ。

そして軍隊は出動し、そして軍隊がすべからくそうであるように、無辜の地元の漁師たちを夷狄と勘違いして虐殺し、大量に捕虜にして、監禁し、拷問し、殺しまくる。

漁師たちは次々と拷問に耐えかねて白状しまくる。シナリオ通りの決定的な証拠をつかんだゾル大佐はシナリオ通りに国境を越えて大軍を率いて出兵する。戦争のための戦争だ。

残された主人公は、拷問のために不具となった夷狄の少女を自らの家に招く。

という波乱万丈でもまだ全体の1/4に満たない。文体は晦渋、語り手の主役は立場通りに実情を知り夷狄が敵ではなく辺境の平和を守るにはむしろ帝国の側が変わるべきを知っていると同時にゾル大佐(が手にする権力と暴力装置と、暴力に対する無感覚さ)が恐ろしく、しかしゾル大佐が出自的な理由から自分を恐れると同時に敵視していることがわかるために微妙な拮抗関係を形成するだけのしたたかさは持ち、それでいて怠惰で安逸な辺境の文官生活に浸りきっているために首都情勢に疎く、しかもそれを自覚しているため政治的にどのように振舞うべきかについての迷いがあり、……(あと1011パラメータくらいがこのインスタンスには与えられている)と複雑な行動規範に従って行動し、自らの首を締めて行く。

そして、夷狄の少女を解放するための5人だけでの砂漠の行軍、理不尽な夷狄の長老、離反する兵士の精神、そして帰還後、ついに政治的な死地に追い詰められ、地位をはく奪され、人格(ついでに人権も)を剥ぎ取られる。その間に挟まる幾つもの冒険、脱走し、町の構造を知りぬいている男が知恵を駆使して逃げ隠れしまくるところは、まるでジャッキーが体術を駆使して部屋の中で相手に見つからないように逃げまくるシーンのように見事なカメラワーク。

プロジェクトA デジタル・リマスター版 [DVD](ジャッキー・チェン/エドワード・タン)

でも、物語はまだまだ全然、終わらない。


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