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日々の破片

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2007-09-05

_ 自動生成にこそ事前コンパイル

ソースを自動生成するとすると、一連の流れとしてコンパイルがあってもそれほどおかしくはない。いずれにしても、人間が手を加えるとしたら(仮に完全なソースが生成されるとして、後述)、ジェネレーションギャップパターンを適用するだろうし。

仮に、自動生成がうまく働かなかったとすれば、コンパイルによって、クラス名やメソッド名、定数の定義ミスや、あるいは生成されたソース内の変数の組み立ての問題を見つけることができる。

もちろん、型の定義ミスも。

これらは、人間がソースを書いた場合よりも、コンパイルされない元ネタを人間が提供することと、機械的な組み立て処理が入ることから、自動生成されたソースにこそ、役に立つのではないか。

と考えれば、それほどおかしくはないかな。

(Javaはソースコードを書かない/書かせないという方向に突き進んでいて)

_ 遅い夏休み

今頃、休暇をとってたりして。

で、つい手元にあったもので、読むつもりはそれほどなかった(ってのは、Windowsプログラミングの極意でものんびり読むつもりだったからだ)、ドーキンスの『神は妄想である』を読み始めてしまった。

このじいさん、よほどうんざりしているらしく、章を追ってシニカルになってくる。

さて、道徳的な観点からして、イエスが『旧約聖書』の残忍な鬼畜よりもかなりまともになっているのは否定できない。(第7章)

あるいは、楽しんでいるのかも。旧約聖書を(目的は、聖書から人々は道徳を得ていないことを立証するためであって、それは筋が通っている。もちろん、内容を取捨選択することは、ドーキンスが反論の対象としている聖書主義者の「人が神によらずに道徳律を決めることは不可能」に対する否定になるのだから(もし、人間が道徳的かそうでないかに基づいて聖書の内容を取捨選択するのであれば、それは結局、人が神によらずに道徳律を求めていることになる)、それは完全に道徳的である必要がある)適当に開いて、矛盾と虐殺と不道徳を散々示したあと、ついに、ヤハウェイは鬼畜扱いだ。

というか、日本人でよかったよ。アメリカはおそるべきだ。有権者の50%がノアの箱舟を史実として受け止めているとか。それがどういう意味を持つのかということだ。

いや、7章を読んで、はじめて理解したことでもある。なぜ、ホモセクシュアルや中絶、避妊について、キリスト教原理主義者が戦うのかについて、彼らの言葉をひいて説明しているところ。あの連中は、それらを黙認すること=ソドムのように業火に焼かれること、洪水に飲まれること、厄災を招くことと信じているのか。冗談としか思えない(冗談としか思えないのだが、どこまで本気にして読んで良いのかなぁ。少なくても牧師その人たちは信じてないとは思うが)。が、カトリーナ台風の後のロバートソン牧師の説教(それについては単なる噂かもとは書いているが、にも関わらず、他の類似な言質も示している)などから示される事実は事実なのだろう。アメリカってのはおっかない国だな。自分が巻き添えを食らってヤハウェイの怒りに直撃されると頭から信じていれば、そりゃ排斥し、差別し、反対するだろう。本当に、そんなに野蛮な連中なんだろうか? (だからこそ、ドーキンスはこの本を無神論者や、不可知論者、理神論者のために、書いたということになるのだろうけど。もっとも不可知論者=日和見主義者、理神論者=敗北主義者、扱いだけど)

ポジティブな面からは、淘汰による漸進的設計という考え方は興味深い(クレーンという例えを、スカイフックという例えに対置させている。いきなりビルの上にクレーンが到達するわけではない、ブートストラップのことだな)。というか、ソフトウェアが完成に向かう姿に「進化」という言葉を利用する理由はそこにあるのかも。

結局、ドーキンスがここで書いていることは、オッカムの剃刀(という言葉は出てこない)の使い方なようだ(悪魔の証明をしているわけだから)。この精緻な宇宙、2つの並走する衛星に挟まれた3重螺旋の土星の輪なんてまさにそうだ、を作り、あらゆる生命を作り、かつ個々人の祈りを聞き届け、他の神を信じると怒り狂い、災厄を起こし、かつ人を助けて……などという複雑に複雑をすべての生物と星の数だけ乗じたような唯一神が存在すると仮定するより、存在しないと仮定するほうが、確からしい。(というような意味において、アニミズム(Googleはえらい。もしかして、抜きにWikipediaがトップだ)に属する多神教は別扱いで、あくまでも、一神教、特にキリスト教原理主義者(と、おまけのようにタリバンのようなイスラム教原理主義者、多分、ちょっとしたガス抜きのためではないか)にターゲットを絞った論議だ)

あとは、第4章の「意識を高める」についての論議かな。historyは差別的なのでherstoryと呼べというフェミニストのもの言いから、ばかげているにも関わらず、多様なものの見方、感じ方の存在を意識するようになることの重要性ということだ。(他の例として宇宙飛行士が恒星間飛行の間に、「いまごろ地球は春なんだよな」という例をあげている。南半球(北米用の本なので)を意識しているか、という問いかけ)

何かを意識するようになるということは、別に言葉の選び方に限定した問題ではないだろう。絶対禁煙要求者(herstory並の主張かどうかはともかく)のあれこれとかを知ったあとは、多分、ねこねこ先生もそれが苦痛だと感じる人の存在を意識せざるを得なくなるというようなことだな。意識することによって、その主張を受け入れる/入れないとは別に、少なくても、後ろめたさという人間精神の発露を招くわけだし。

で、自然淘汰という考え方も、そのような意識を高める武器なのである、とつながる。たとえば、漸進的設計、フィードバックを取り入れた改良、というようなことを考えるのも、その一例か。

神は妄想である―宗教との決別(リチャード・ドーキンス)

結局、この本の実利的な意味は、おそらく北米で原理主義者からの進化論教育排斥運動に対抗する必要がある人たちに対して、対話(というか反対)のためのフレームワークを提供することなのだろう、と思う。

追記:8〜10章を読んで気が滅入ったような、興奮したような。なるほど、ドーキンスが時間をかけてわざわざ一冊の本にするわけだ。ベーコンの国ですら、イドラがいっぱいというか、普遍的な問題を含んでいるんだろうな。

本日のツッコミ(全1件) [ツッコミを入れる]
_ Saisse (2007-09-07 21:08)

確かに自動生成と静的な言語のコンパイル(というよりもインクリメンタルコンパイル)は相性がいいですね。ジェネレーションギャップパターンはプログラマの自由を奪いすぎるので...


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