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日々の破片

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2011-01-17

_ 室町時代の謎めき野郎

上野にベルリンバレエを観に行ったのだが、微妙に時間に余裕があったので、早めに行って国立西洋美術館でも寄るか、と子供を誘う。

何やってるの? と訊くので、しらねぇから調べてくれと答えたら、美術館のサイトを調べてなんか白黒のやつなんで興味ないとか言い出す。白黒ってなんだ? と覗くとデューラーの版画/素描展だった。

そうは言っても版画ってのは結構おもしろいし、この野郎は妙な題材を取り上げてるし(と、ギリシャ神話から題材をとった画をさして)いいじゃん、行こうと連れ出した。どうせ家にいてもだらだら過ごしてしまうわけだし、今ならお前は無料で観られるんだからラッキーじゃんとか。

そうしたら、むやみとおもしろい。

最初、版画で受難を題材にしたやつが、大きいの、ばらばらなの、小さいの、それから聖母伝とか、そういったのが並んでいる。おれは適当につまみ眺めしていたら(混雑はしていないが、精緻な作品が多いだけに列はゆったりとまるで草を食む羊のようにしか進まないからだ)、子供はしっかりと列の中に入ってじっと眺めている。気に入ったようだ。

乗り気じゃなかったわりにマジメに観てたじゃんと訊くと、そりゃ題材を良く知ってるからおもしれぇとか答える。最後の晩餐で皮袋を腰につけてるのがユダだよね、とか言い出すから、え、そりゃ気付かなかったと観直してくると、確かにユダ去りし後の1枚の不在の席に、他の2枚では腰に皮袋を下げた野郎が腰かけている。ああ、金貨の袋か、とか知ったかしたら、銀貨だよ、と修正されたり。

最初のやつには14人いたとか言うので数えると確かに14人いる。うーむ。ところで、イエスに抱かれている小僧は誰だ? と訊くと、そりゃ一番愛されているんだからヨハネに決まっているとか。すると顔回の役回りなんだなぁとか言ったらさすがにそれは知らないようだが、なかなかの教養人になっているようで、他にもお祈りのところとかいろいろ教えてもらう。なんでピラトが手を洗うんだ? と訊くと、日本語で言うと足を洗う+手を切るになるけど、せっかく余計な処刑をしなくてすむようにとりなしてやったのに民衆がそれを望むなら、おれは知らんという宣言の意味だとか。

だが残念。時間切れとなったので、次のフロアの素描とかはスキップせざるを得なくなった。で、駆け足で、想像で描いたという写実的でありながらまるでからくり仕掛けのような突起がある犀とか、不思議な建築物の形式のすごろくみたいなやつとか、布陣図のようなやつとか、眺めて、はて、メランコリⅡという画の前でこれはなんだか不思議だぞと立ち止まる。どっかで見たような。

そういえば、署名があれだよね、とか言い出すので確かに三角だし、技術者同盟人のような、とか、で思い出した。

ロスト・シンボル 下(ダン・ブラウン)

子供に借りたロストシンボルでネタにされていたのだった。

というわけで、えらくおもしろかったので来週ちゃんと観ようとか決めたのだが、残念、1/16が最終日だったのであった。観られて良かった。

その他: 1490年あたりから活躍ってことは、以後涙の室町幕府なんだから応仁の乱のあたりの人だな。

また、グーテンベルクの直後の人なので、自身、民衆用の受難画の本を売りさばくべく小受難劇を出版するとか。おお、つまり、ニューメディアにすぐさま順応したアーティストってことだな、とおもしろく思う。

つまり、芸術的感動とか感慨のようなものとは無縁だが、大量の情報を埋め込んだ作品によって知的な興奮を与えるタイプの作家だった。機会があったら、こんだ、じっくり観てみたいものだ。


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