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日々の破片

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2012-03-15

_ 共和主義、民主主義、多数決原理

センの正義のアイディアを読み進めているのだが、これまで民主主義=多数決原理と考えていたのが、どうもそうではないらしいということに気付かされて、ちょっと驚いている。

もちろん、用語というのはなんでもそんなものだから、普通の人にとってはインターネットはするもので、それはつまりはブラウザーを利用してHTTPでGETしたHTMLを表示することを意味しているのと同じくらいに、異なることだったようだ。

少なくとも、センが定義し利用している概念において、多数決原理で少数意見を無視するのは共和主義で、民主主義は多数が少数に配慮する、より人間的な政体を意味するものであった。まあ、そう言われてみれば、なるほど、アメリカ合衆国は共和党と民主党が同じ多数決原理の上で争っている異なる考え方の集団であった。

イスラム原理主義の過激派による自爆テロが多発しても、だからといってイスラム教徒を民衆がリンチにすることはない民主主義の国はインドで、(それは書かないわけだが)9.11以降コーランを焼き捨てたりチャドルを着けた人間をリンチにかける共和主義の国はアメリカであった。

また、自由の概念について、アメリカの支配的な考え方についても考えさせられるものがあった(注)。

1) 四肢不自由で寝たきりである。たまには外へ出たり入浴したいができない。

2)四肢不自由で寝たきりである。そこで国家あるいは自治体(もしくはボランティア)が税金(もしくは善意)を使って彼のために介護者を派遣して外へ連れ出したり入浴させたりしてくれる。

3)四肢不自由で寝たきりである。しかし金があるので人を雇って外へ連れ出させたり入浴させたりする。

このうち1が不自由というのは共通の認識なわけだが、アメリカの支配的な自由の考えでは、2は自由ではないこととなる。したがって自由の国アメリカでは2の状態は基本的に有り得ない。なぜならそれは自由ではないからだ。

それはおかしいだろう、とセンは言う。1と2は同じか? もちろん違う。この違いを無視して、2は自由ではないからあり得ないというのは間違いだ。

正義のアイデア(アマルティア セン)

なるほどなぁ、と健康保険制度について貧しいアメリカ人(ほど)そんなものはいらない、ここは自由の国だ、と胸を張って自滅する愚かしい姿を思い浮かべる。

教育とは恐ろしいものだ。

注)アングロサクソンの言葉では、freedomとlibertyが異なる単語だというのは関係あるだろう。フランス語のliberteはむしろfreedomであると、高校生の頃、ダニエルゲランを読んで学んだことを思い出した。

日本語の自由は、コンセンサスではfreedomのほうで、ただ自由民主党だけが異なる意味(つまりliberty)で利用しているという言い方もその頃、見かけたな。

そこで疑問なのだが、リベルテール(これはおれの政治信条であるわけだが)の英訳がリバータリアンのはずだが、いつの間にかリバータリアンの意味が変節したのか、それともリベルテールにはリバータリアンの意味が実は内包されているのか、どちらなのだろうか。おれの理解では、現在のリバータリアンはまったくリベルテールではない(なぜなら、リベルテールの基本的な思想には相互扶助が当然のように根を生やしているからだ)。したがって、後者ではない。だが、前者だとした場合、それは意味がつかめない。ありうるのは、現在のリバータリアンがアメリカではサッコとバンゼッティが殺されたときにリベルテールが死滅したので、言葉を乗っ取った可能性だが、それにしても言葉の多義性はおも(そ)しろいなぁ。リベルテールが英訳して自分をリバータリアンだと語ると、その瞬間にまったく異なる政治信条になってしまうわけだから。


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