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日々の破片

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2013-11-18

_ 137億年の読了

飯食いながらちまちま読んでいたロイドの137億年の物語も読了した。

137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史(クリストファー ロイド)

途中から通勤用にダイアモンドの銃・病原菌・鉄を読み始めたので、なるほど、ダイアモンドから相当引っ張ってきているのだな、と納得したりした。

ダイアモンドのほうが学術書の一般書化なのに対して、ロイドの本は一般書の子供用化という趣なので、より明確な方向性の位置づけがある。まあ、教養のある英国人なので、当然、多様化を認めてどちらかといえばエコ寄り、暴力的であるよりは見守り的なバイアスが強い(ただし、バイアスは選択する語彙によって決まるので、翻訳者によって導入されたバイアスの可能性もある。文芸春秋なので微妙なところだ)。小中学生が読むのであれば、そのようなバイアスはむしろあったほうが健全なので、良いことだ。

特に、先史時代までに関しては、ずいぶんと子供の頃に習った歴史と変わってきているので(大陸が1つだったとか、ビッグバンとか、1960年代の子供は知らない)読んだ価値はあったし、同様に、4大河文明についてもずいぶんと異なることになっている。歴史時代であっても途中で小氷期があった(北条の鎌倉の頃)というのは知らなかった。

なかなか興味深い歴史のエピソードとして、北アメリカへ渡ったバイキングの話は初めて知った。

北アメリカへ着くと、当然、ネイティブアメリカンが住んでいて、でっかな船からヒゲの大男たちが出てくるので驚くが、まあ遠くから来たからと歓迎する。バイキングも相手が歓迎してくれば暴れたりはしないので、この連中とならうまくやれそうだと、とっておきの牛乳を振る舞う。(移住のための航海なのだから牛を連れてきていたのかな? 牛乳そのものを樽に入れて来たのだとしたら腐りそうだが、そういう様子ではない)

これはおいしいと、酋長をはじめとしたえらい人たちが喜んで飲む。

しかし、北アメリカには牛はいないから、当然、牛乳を飲んだことはない。乳糖不耐症なのは明らかだ。

案の定、翌朝、酋長たちは強烈な下痢に襲われる。あの野郎共は毒を盛りやがった。というわけで戦闘を開始する。

バイキングはほうほうのていで船に乗って北欧へ逃げ帰った。

もし、ここでバイキングとネイティブアメリカンの同盟が生まれていたら、イギリス人やフランス人に好き勝手に北アメリカが荒らされることはなかったかも知れないのに、残念なことだ。

本当かなぁ? でも、おもしろい。

さらに、イギリスの王朝はバイキングが元と知る。なるほど、それでシェイクスピアを読むと、負けた王族がやたらとスェーデンのほうへ逃げていくことがあるわけか。意外と近しい関係なのだな。

ムガール帝国の崩壊もこの本で知る。アレキサンダー大王もそうだが、あまりに偉大な王の後は、帝国が崩壊するのがパターンのようだ(偉大なため、政策が多岐にわたり、それぞれには矛盾があるのだが、1人でさばいていればうまくおさまるところを、複数の人間がそれぞれに次いでしまうと整合性が取れずに瓦解するということのようだ)。

ローマ帝国、イスラムの帝国群、ムガール、中国といった大統一帝国が、すべて停滞して中世のヨーロッパに圧倒されることになったのは、宗教的な思想の統一による競争の無さということに落ち着くようにみえる。そう考えてみると、八紘一宇が成功しなかったおかげで1960年代以降の日本の大躍進もあったと考えられる。もっとも国と国が争うのは不経済なので、企業と企業が争うように方針を変えたのがアダムスミスだとしたら、1920年代にもなって、のこのこ領土をでかくして旧知の資源を内製しようという発想がすでに時代遅れだったとも言える。

現代のほうではハイオクとフロンを発明した科学者の悲劇が印象的だ(同じ人なんだな)。ハイオクの実験で鉛中毒になり、より安全な部署へ移動してフロンを発明する。いずれも、発明時点では画期的なのだが、副作用が大きいため排斥されることになる。本人は病床で楽に動くための補助器具の誤動作で首が絞まって死ぬというおまけつき。しかしオゾン層破壊が判明してフロンを規制すると、赤外線を抑制していた効果が減少して(これも意図せぬ副作用)ちょっぴり地球の温度も上がったとか。

アマゾン評で、星1つの書評を書くのであれば、次の点を突けば良い。日本はモノマネの才能で躍進したという記述がある(1950年代以降)。それを白人優位視線として言葉じりをとらえれば良いのだ。

だが、躍進というのは、基本マネだ。メソポタミアの農耕の真似をした地中海諸国が躍進し、それを真似したヨーロッパ諸国が躍進し、エンリケ航海王子のマネをしたスペインの南米政策(鉱物資源を現地調達の奴隷に採掘、加工させて輸入する)をマネをしたイギリスが躍進する。歴史を見ればマネをすれば後出しでよりうまくやれる。今、サムソンの動きを見れば、イギリスがスペインのマネをするときには、スペインでガミを食った連中がイギリスに寝返って航海するのに相当力を貸したのだろうなぁとか想像がつく。技術に国境がないように、海の男たちにも国境はないからだ。というわけで歴史は繰り返しながら進んでいく。

いずれにして、おもしろかった。


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