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日々の破片

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2014-03-02

_ Hatching Twitter読了

30%読んだところでもうやめようかなとか言っていたが結局、読み終わった。とは言っても、最後まで3文に1文は意味が取れない単語があったりして(もちろんKindleなので辞書はひけるのだが、語意がわかったからといって文意が取れるわけではない)、どこまで読めたのかはすこぶる怪しい。怪しいのだが、おもしろかった。

30%読んだところまでは、面白ギークの生態観察だったわけだが、その後は、ベンチャーが急成長することで発生するさまざまな問題、ベンチャーキャピタルとの協力と反目、製品をとるかコンセプトをとるか収益をとるか、政治と自由、名誉(他者との関係)か矜持(自分の心持)か、友情か仕事か、といったさまざまな観点とともに物語は進むのだった。

10人規模のベンチャーから400人越えの中堅企業(規模は。資産価値からは大企業だ)への脱皮はどうあるべきで、それぞれの局面においてCEOはどうあるべきか、といった読み方をするならばビジネスストーリーだし、有名人戦略やプロモーション戦略に着目すればマーケティングストーリーだし、友情物語であったりもするし、おもしろい。ただしどうあっても技術の本ではない。1つだけ技術的観点が読者にアピールすることは、バックアップをまともにとらないサービスを許容するCEOは馘首されても当然ということだけだ。

キャラが立っているのだが、そこに作者の工夫があるように読めた。

つまり、Twitterとは何か? というのが命題で、それに対して主要な登場人物がすべて立場を異にする。それが軋轢の要因となる。

Hatching Twitter (English Edition)(Bilton, Nick)

・イヴ・ウィリアムズ

優柔不断な性格のためローンチ時期を掴み損ねて、最初に起業した会社を潰してしまう(結果として出資してくれた父親に相当な迷惑をかける)。その後オライリーに勤めてだらだらしているうちに、自由な情報発信のためのツールとしてBloggerを作り、Googleに買収されて金持ちになる。が、Googleが肌に合わずに退職する。ぷらぷらしているところを向いの家に住むノア・グラスに頼まれてポッドキャスト企業のOdeoの共同出資者兼CEOとなる。アップルのポッドキャスト参入によってOdeoが空中分解した後に、別の会社を作ったりするが、結局、TwitterのCEOとなる。収益ゼロのTwitterにBloggerで得た資産をがんがん注ぎ込む。しかし、優柔不断な性格と人事に友情を混ぜ込むスタイルが収益化の足かせになるとベンチャーキャピタルから判断されて追放される(自身のCEO辞職動議の席でCEOはローテーションだとフェントンに言われて得心したようだ)。20億ドル以上の資産と奥さんと2人の子供と楽しく暮らす。Twitterはミニブログであり、自由な情報発信のためのインフラだ。

・ノア・グラス

海賊ラジオ局を運営していたが、うまくいかなくなってぷらぷらしているところを、向いの家にBloggerのイヴが住んでいることに気付いて近づき、友人関係となる。ラジオに次ぐメディアとしてポッドキャストに目をつけてODEOを起業するが、有名人をCEOに置きたかったのと出資額からイヴにその役割を渡す。ポッドキャストがぽしゃった時に、Twitterのアイディアに飛びつき、プロダクト化するためのさまざまな機能を考える。が、そのため実装者を占有することがあってジャックから嫌われる。しかも、ジャックの態度を親切からとは言え批判したりするため、憎まれる。さらにギークというよりはサンフランシスコアーティスト文化側の人間のため、Twitterの初期プロモーションをそちら側でやろうとして失敗する。などなどの要因からTwitter社の立ち上げ前にイヴからODEOを追放される。Twitterのサービス化への貢献度は非常に高かったのだが、そういった経緯から貢献者リストから完全に消されていた。最後はテック業界とは離れて(あるいは仲間たちが違うというだけかも)妻と幸福な家庭を作る。Twitterは、物理的には孤独であっても人びとに親密な繋がっている感を味あわせることができるチャネルだ。

・ジャック・ドーシー

ODEOに雇われたときは、パンク厨房プログラマーで、鼻ピアスとかしている。好きになった女性から聞かされた女子高生の携帯文化を元にTwitterのアイディアをODEOに持ち込む。イヴを半分おどしてノアを追放した後は名実共にTwitterを支配して最初のCEOとなる。以後、CEOにふさわしくあろうと、ピアスを外して社員の福利厚生に気配りしたりするが、口先だけで能力が伴わず、実利的な判断もできない(ただし、大して給料も出ていないのにハードワークを続けていることは書かれている)。最終的に、Twittのバックアップをまったく取っていないといった喫緊の問題に対して全くアクションを取らないことがベンチャーキャピタリストたちの怒りを買ってCEO職を追われる。というか、Twitterの資産がTwittの生データにあるということをベンチャーキャピタリストたちは早い時期から気付いていたことが驚きだよ。ところが閑職についたことを良いことに、マスコミに対して自分を徹底的に売り込み、イラクへ行ったり、本来呼ばれていないのにごり押しで参加したTIMEのセレブパーティで有名なインタビュアーに自分を売り込んでインタビューされたり(良くわからないのだが、徹子の部屋の黒柳徹子とか、笑っていいとものタモリみたいな位置の人だと思う)、いつの間にかTwitterを一人で作ったことにしていたりする。またスティーブジョブズの真似を徹底的にする(もうパンクロックは聞かずに、ビートルズを聞く)。その甲斐あって、フェントンのように巨大企業となったTwitterのCEOにふさわしいと考える協力者たちが次々に現れて、イヴの追放に成功する。ただし、スクェアも持っていることから、CEOの座はディックコストロに与える。1.5億ドルで購入した断崖にガラスの壁がせり出した豪邸で暮らしている。Twitterは、自分のステータスを他人に示すためのサービス。

・フレッドとビヤン

初期からのベンチャーキャピタリスト。怖い刑事と人情刑事のように、冷酷なフレッドと話がわかるビヤンでコンビを組んで、ちょっとでも投資が失敗しそうになるとCEOの首を挿げ替えにやって来る。イヴ「おれの何がまずいんだ?」フレッド「全部だ。お前が先週やらせた新しいWebインターフェイスだが、大嫌いだ。さっさと死ね」みたいな感じ。Twitterは投資先。

・フェントン

途中から出て来たベンチャーキャピタリスト。ジャックに心酔していて、イヴは役立たずだと考えている。Twitterはジャックが作った投資先。

・ビズ・ストーン

イヴのGoogle時代の友人。すごい貧乏でクレジットの借金が山ほどあって、イヴに助けてもらう。小動物が大好き。Twitterの共同出資者。Twitter社のキッチンに置いてある果物が夜のうちにネズミに齧られるので、他の社員が殺鼠剤を撒くかネズミ捕りを仕掛けるか相談していたら、泣きながら抗議した。イヴの追放を阻止しようと日本からプライベートジェットで帰国することを拒否したりして抵抗する(ジャックの追放も阻止しようとしたので、基本的にこの男はいいやつなのだ)。イヴが追放された後、ディックから仕事を取り上げられてしょうがいないので辞職した。それでも手元に200万ドルほどの資産が残ったので、でっかな家に貧乏時代からの恋人と一緒に暮らして、小動物のためのサンクチュアリを作ったりしている。Twitterはイヴと共同出資して作った会社。

・ゴールドマン

イヴのGoogle時代の友人。イヴ追放後すぐにディックによって馘首された。なんというか、ここにただおるみたいな人でいつも居るのだが何をしているのか良くわからない(というか記憶に残っていない)。共同出資者ではある。

・ディック・コストロ

元コメディアンで、イヴのGoogle時代の友人。COOとしてTwitterに呼ばれる。実務能力があり、ちょっと年かさ、トークがうまい、要するにCEO向きなので、イヴ追放後のCEOとして白羽の矢が立てられる。ほんのちょっぴりイヴとの友情について考えるが、ベンチャー気分が抜けないTwitter社を本格的なビジネス組織へ作り変えるという使命に惹かれて、引き受ける。さらにCEOになった後には、独裁体制をひけるようにイヴグループの粛清を冷静に手掛ける。Twitterは社風を整風する対象。

・スヌープ・ドッグ:ビズを待つ間にカフェテリアで待ちくたびれてマリファナを吸って無礼講を始めてしまう。Twitterはマーケティングツール(というよりも何も考えていない)

ザッツ・マイ・ワーク・ヴォリューム2(スヌープ・ドッグ)

それにしても、口汚い人たちだな。

・豆知識:ジャックがイラクの空港へ軍用機で着陸するときに学んだ知識は役に立つ。飛行中はヘルメットを着用するのだが、着陸時はゲリラによる下からの銃撃に対抗するために、ヘルメットを股間に挟んで着席する。


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