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日々の破片

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2014-05-04

_ 三軒茶屋でモロッコ

三軒茶屋の246から世田谷通りに分岐するところに、以前から謎の店舗密集地帯があって、えらく興味を惹かれていたのだが、別に用もないからいつも単に通りすがっていた。

昨日、世田谷通りのそのあたりを通りすがっていると、妻がモロッコ料理の店があると言い出した。どこだと聞くと、エコー商店街だという。なんだそれ? あそこ、と指さすところを見ると、まさにおれの憧れの地ではないか。

すぐに車を適当に脇道にそらしたら、そこに駐車場があって、空の1字が見えたので停めた。同じビルに入っている東急ストアで2000円以上買うと1時間の駐車券がもらえると書いてあるので、あとで買い物することにして、スキップしながらエコー商店街(という名前と初めて知った)へ向かう。

が、その前に細い道があって、妻はいやだというから、1人でちょっと探検に行く。2階建ての小さな飲食店がずらずら並んでいて、渋谷川の今は暗渠になっているところの飲み屋街(規模はずいぶん小さくなった)や、新宿西口の歩行者用ガードを抜けたところのような感じだが、より雑然としている。そういう飲食街を回りに置いて、エコー商店街はアーケードになっていて、少しばかりきれいで明るい。

で、どこにあるのかずっと歩いていくとほとんど246というところにあった。

モロッコ料理は自分でこんな感じだろうと想像して作ったもの(羊と野菜をオリーブオイルで蒸し焼きにしてレーズンやプラムで味つけしたもの)は何度も食べているが、それを名乗っているレストランは初めてなので、えらく楽しい。

入ると、テーブルが4個くらいと8人くらいかけられるカウンターがあって、店の人がいきなり予約があるかどうか尋ねて来た。狭いから予約しないとだめなのかなとか思ったら、どうもそうではないようなので(何言っているのかわからなかったのだが、よくよく見れば日本の人のようなので、回りがうるさくて良く聞こえないだけなのだった)、面倒なのでカウンターでいいよとカウンターに陣取った。

でメニューの説明(当日分は黒板に書いてある)をカウンターの中にいる背の高い女性が説明してくれる。しかし当然ながらどれを選択すると良いのかはさっぱりわからない。

そういう場合は、コースを食べれば良いということは経験上わかっているから、2500円くらいのコースを頼んだ。

すかさず飲み物は何かと有無を言わさない雰囲気で聞かれたので良くわからないネーブルオレンジのジュースを頼んだ。これはおいしかったのでOK。妻は良くわからないカクテルを頼んでいたっぽい。

最初に小さい器が並べられた。名前はさっぱり憶えていないが、食材は覚えている。

オクラの塩レモンとにんにく(おもしろい。塩レモンというのはこうやって食えば良いのか)、ナスのコリアンダーなます(コリアンダーが合っていておいしい)、パプリカのなますみたいなの(おいしい)、レンズ豆の何か(これがすごくさっぱりさわやかな味で、おやこういう豆料理があるのかとハッピーになる)、空豆。

空豆のも結構おいしかったし、たまたま家に空豆があるのを思い出してカウンターの中の人にどういうものか聞いたら教えてくれた。茹でた空豆を玉ねぎのみじん切りと炒めてクミンで香りづけをするのだとか。で、家に帰ってから空豆(莢付きなので茹でるのは面倒なので焼いて蒸し焼きにする)と玉ねぎをオリーブ油で炒めてクミンを振って、塩気が無さすぎるのでクレイジーソルトを振って食ってみたら、なんか違うがやはりおいしかった。っていうかクミンシードはこういう使い方も良いものだなと1つ勉強になった。

妻が、カウンターの中の人に本を読んだとか話している。おれは知らなかったがいつの間にか図書館で借りて読んだらしい。

クスクスとモロッコの料理 ~路地裏のモロッコ「ダール・ロワゾー」のモロカンレシピ~(石崎 まみ)

これだな。

おれはどうもレンズ豆とひよこ豆がごっちゃになって言い間違えるのだが、カウンターの中の人が、レンズ豆はメガネのレンズみたいな形のやつだと教えてくれる。しかし、実は順序が異なり、ガラスを使った便利な器具が出来たときに、湾曲具合や形がレンズ豆にそっくりなので、レンズと呼ぶようになったという。

次に揚げ春巻きみたいなやつが出て来た。

いきなり手で持ったら熱かったが、それはそれとしてこれはおいしい。甘いやつとそうでないやつの選択制だったので、甘いやつ(シナモンシュガーを振りかけた鶏のささみのやつ)を頼んだのだが、甘い料理はやはり良いものだ(日本料理も出汁に味醂と砂糖と醤油で甘いのが多いし、甘い料理は料理の王道だなぁ)。

次に、モロッコ風オムレツ。内容やケチャップみたいなものをつける点については、スパニッシュオムレツとほとんど同じで、ジブラルタル海峡挟んだ同じ地帯だけのことはあるなぁとか思う。しかし、どえらくふわふわしていておいしい。どうやればこんな風にふわふわできるんだ? と妻に聞いたら、カウンターの中の女性が、これがタジンで調理するってことなんだと説明してくれた。元々調理に使うには水が貴重だから、食材の水分でできるだけまかなえるように考えられてタジンってのはできてるから、熱の回りかたがうまい。ただ日本のガスコンロは火力が強すぎて、普通の火加減ではうまくできない。あっちでは炭(おそらく備長炭みたく効率が良いわけではないだろうなと考える)なので、同じくらいに弱めにして火にかけてそれなりに時間をかけてやるんだとか説明してくれた。

次にタジン料理。妻が肉を食わない人なので、しょうがないので肉がないやつにした。すると、実に薄味の汁に野菜が浮いていて、これはおいしい(特に汁がおいしい)のだが、自分でこんなものだろうと想像して作っていたタジン料理とまったく違ってある意味拍子抜けした。

最後にクスクスで、以前、良くわからないまま買って食ったら、たんにぽろぽろしているだけでこれはどういう食い物なのか? と不思議に思ったのだが、トマトで出汁が出たスープがついてきてそれをびしゃびしゃかけて食うのだった。付け合わせにおれは、牛と羊のソーセージのようなものを注文したら、これが香ばしくてやたらとおいしい。

覚えてないが、ハリサ(唐辛子ペースト)がどこかの時点でついてきた(シナモンシュガーのやつとは思えないから、オムレツかな? ケチャップという記憶にすり替わっているけど、小皿と色からはオムレツにハリサがついてきたと考えるのが正しそうだ)。この調味料は以前妻が買ってきて使っていたことがあるが結構好きなのだった(チューブがラミネートではないのでえらく使いにくかった)。

ハリサ 唐辛子ペースト 70g(-)

(家にあったのとは違うメーカみたいだから、ハリサってのは商標じゃないのかも)


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