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日々の破片

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2019-05-02

_ 魂のゆくえ

ユナイテッドシネマ豊洲でポールシュレイダーの魂のゆくえ。

ポールシュレイダーは、僕にとっては何よりもハードコアの夜の作家なのだが、後期アメリカン・ニューシネマの作家という位置づけになる。

アメリカン・ニューシネマの末期に中学生だったので相当観たし、その時点での印象なので映画史的な事実とは異なるのかも知れないが、僕にとっては、集団戦が、2人の旅になり、末期には1人になる過程のように感じた。

したがってスケアクロウや真夜中のカウボーイで相棒との別離があって(明日に向かって撃てはちょっと印象が異なる)、人間ではなくネコが道連れとなって(ハリーとトント、アリスの恋は息子だが同格ではないからな)、そしてたった一人のタクシードライバーと、親父の娘探し(ふと気づいたが、これは捜索者だったのだな)のハードコアの夜で終わる。

ハード・コアの夜 [DVD](ポール・シュレイダー)

もっとも、ハードコアの夜を観たのはそれよりも遥か後で、妻と僕の間にジョージCスコットのブームが吹き荒れたときだった。チェンジリングか炎の少女チャーリーがトリガーになったのだと思うが、その一環で観たのだった。

で、魂のゆくえがいきなりやって来たので観に行ったのだが、悪くはなかったがさほど感心もしなかった。

最初から最後に向かって、だんだん1シーンあたりの時間を短くしていくことで緊迫感を上げるとか、構図の良さとか技術的な点ばかり目立つように思う。それなりに余分なセリフ無しで、主人公がゴミを捨てると、そのゴミをオルガン弾きが見てしまい、それからしばらくして唐突に上司からの酒の飲み過ぎへの忠告になるとか続けているのだが(したがって、ストーリーを構成するには映像を正しく見ていないと追いつかない)、雰囲気を作る映像の多さが退屈ではある。でもまあ、説明ばかりをぺらぺらしまくる映画に比べればよほど映画ではあった。

話は、ほぼタクシードライバーと同じで、戦争の後遺症(こちらは息子をイラクで亡くして、妻に逃げられる)による苦悩という個人的事情が(それだけでは不足とばかりに胃癌による死の宣告に対する恐怖がないわけでもない)、ふとしたことでのめり込んだ公害企業に対する義憤から自爆テロへ向けて暴走し始めるが、偶然のタイミングで計画を中止するのだが、タクシードライバーが孤独な運転手に戻って何かのトリガーで再び狂気に走りそうなまま終わるのに対して、愛を見つけてぐるぐる回る大団円でうんざり、というのが違う。

ハードコアの夜と同じテーマとも言えなくもない。唐突な不幸に見舞われていろいろ調べて行くうちに現代社会の闇を見つけてしまい、狂気にとらわれていく。ハードコアの夜は一応は娘を取り戻して大団円っぽいが、多分、娘は再び家出するだろうし、今度はジョージCスコットはもっとやばい世界に入って行きそうで暗澹たる終わりだったので、そちらに近いかも知れない? いや、イーサンホークは自分を律することにしたので、それは違うだろう。が、胃癌なのは間違いなさそうだ。何も解決になっていないという点で終わらせることに関しては何も変わっていない。

ピンクの薬が溶け込むシーンと、自殺しようとしてグリセリンが何かを飲もうとするところとか、液体の気持ち悪さの映像が妙にスタイリッシュで退屈さに輪をかけなければまだ良かったのだが。

それにしても、ドライヤーは別格だな。いや、ポールシュレイダーが凡庸なだけなのかも。

むしろ終わった後の妻と子供の会話のほうがおもしろかった。

「それにしてもイーサンホークはいい男」

「おっさんじゃん」

「でもいい男じゃない?」

「おっさんじゃん」 ← 年齢フィルタリングがハイプライオリティ

……

「それにしても話題になってもいないのに、それなりに混んでいたけど、ポールシュレイダーには根強い人気があるのね」

「イーサンホークがいい男だから観に来たんじゃない?」

「どうして?」

「自分で言ってたじゃん。来てたのおばさんばかりだし」


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