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日々の破片

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2019-07-21

_ 新国立劇場のトゥランドット

これはすごかった。

大野監督自らが振るので、遅くて退屈するのではないかと思ったら全然そんなことはないが、音楽はもとより、おそるべきは演出のおもしろさだ。

ちょっとエッシャーの牢獄の入り組んだ階段のエッチングを思わせなくもない構造的な建造物を背景にトゥランドットが始まる。最初は子別れのシーンで、これは何を意図しているのだろうか? 祖母とトゥランドットなのかな? それともカラフが王宮を追放されたのはこんなに幼い頃だったのだろうかな?

始まる前についプログラムを読んでいたら、大野と演出家のオリエがお互いの噛み合わない主張でやりあっている。大野がアルファーノの大団円でいいじゃんと言えばオリエがあんな終わり方じゃあリューが報われないだろ、あんなの無いよ、おれはイヤだよ。いや、あれはプッチーニが残した部分を考えれば当然至極だよ、いやリューが重要なんだよ、なんだよあの終わりは。

で、オリエは、まあ舞台を引っ繰り返してやると息巻く。

むちゃくちゃおもしろいではないか。

以前の演出はサーカスか何かのキャラバンの中での劇中劇としてのトゥランドットで、それはそれで悪くはない演出だったが、こちらのほうが好きだ。というか、色合いが西村作品のものに近い。そういえば、マクヴィカーのトリスタンの色合いもこんな調子だった。大野の趣味なのかな? おれは好きだ。

歌手も抜群。

完全に2組の交代(皇帝を除く)で、この日はジェニファー・ウィルソン、デヴィッド・ポメロイ、砂川涼子なのだが、砂川涼子のリューは絶品、ポメロイや実に良い声でおおカラフですな、ウィルソンは貫禄たっぷりでこれまた見事なトゥランドット。実に良い。

ピンパンポンが妙に1幕では土方みたいな服で出てきてなんじゃいと思ったが、2幕、3幕とだんだんまともな服になっていくのは良くわからん。歌にある瀕死の中国がカラフのおかげで徐々に良くなっていくことを象徴させたのかな。

負けるな謎解き名人のところでは、群衆が握手を求める。実に気持ちが良い演出。

リューの死はなかなかに壮絶だが死体がいつまでもいつまでも存在し、トゥランドットはそこから離れない。

愛のために自分の命を捨てるというのは、ワーグナー風の女性の自己犠牲による世界の寛解なのだが、それを逆手にとった解釈なのだろう。

ひっくり返すとしたら他に手段はないだろうから(同じ新国立のコジ・ファン・トゥッテのような終わらせ方もないわけではないが)、悪くはない。

それにしても、良いオペラハウスが近所にあるのは実に幸福だ。


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