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日々の破片

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2020-02-08

_ 新国立劇場のセビリアの理髪師

これまで観た中で最高のセビリアの理髪師でびっくり。

演出のおもしろさもあるのだが(無駄なことをするその他の登場人物を使いまくることで舞台の同時並行性を生かして退屈をさせないようにする、特に2幕のしつこくてバルトロでなくても怒りたくなるアルマヴィーヴァとバルトロの挨拶の繰り返しの最中(2階の右の部屋)に、ロジーナ(2階の左の部屋)に体操だか演武だかをさせるのがおもしろいし、道を行き来する音楽教師軍団とか、右手前の娼館の使い方とか)、何よりも歌手がすばらしい。

アルマヴィーヴァのルネ・バルベラは容姿は良くわからないが、声は美してしかもとてもコロコロ、ロジーナの脇園も良い声でしかもとてもコロコロ、ドン・バルトロのボルドーニャは(キャラクタ歌手には良くあることとは言え)実にたくさんの日本語をうまく使ってしかもドスが効いた抜群のうまさで、フィガロのセンペイもうまいし、ベルタの加納も(ちょっと指揮と合わなかったように思ったが)ここぞとかっちり。ドンバジリオのスポッティはとてつもないバジリオで説得力抜群。

なんで、こうなった? とびっくりするくらいにすごいセビリアの理髪師だった。こんなにおもしろいセビリアの理髪師が観られるなんて感無量だ。特にアルマヴィーヴァの歌がこんなにおもしろい(1幕の3曲目のアリアだと思うのだが、2回目の繰り返しでとんでもなく装飾しまくって歌って、これまで退屈で気づかなかったのかも知れないが、こんなにおもしろい歌だったのかと大発見とか)とは気づきもしなかった。

本当に良いものを観られたなぁ。

以前は気付いたのか、単に忘れただけかわからないが、結婚してロジーナに渡すつもりだった花束をドンバルトロが怒って放り投げるとベルタがキャッチするというフィガロに続く演出(もっともベルタは捨ててしまうのだが)も悪くない。

お話としては、最後、アルマヴィーヴァが水戸黄門の印籠よろしく身分証明書を取り出すところは、ドンバルトロの腐れっぷりにうんざりしているので溜飲が下がるのだが、反世襲貴族制主義者としては不快になるのでアンビバレンツが楽しめるのも良い。しかも、この後フィガロの結婚になってアルマヴィーヴァの不誠実さは爆発するわけだが(その一方で、フィガロに素直にしたがったり平民のロジーナと平然と結婚したりする平等主義者の側面は、騙された格好であっても初夜権を放棄したりして健在)、一方、有名なオペラにはなっていない不義の子ではロジーナがケルビーノとできてしまうという未来を知っているだけに複雑なハッピーエンドだ。


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