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日々の破片

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2020-11-27

_ サーチという映画がえらくおもしろかった

妻が強くお勧めするサーチを観た。妻は2度目になるが、2度目のほうが伏線の回収っぷりが良くわかっておもしろいと言っていたが、1回観てもシナリオとシーンの作り方の抜群っぷりは良くわかった。

最初、Windows XPに父親、母親、子供の3人分のアカウントを作るところから始まる。全編、コンピュータの画面だけで構成されているのだ(というのは、しばらく観ていてわかるわけだが)。ノートンのアイコンが右下にあるのが時代を感じさせる(これも実は細部としては重要だったりすることに後で気づくことになるが、全編そんな感じだ)。

そこに、撮影した写真やビデオがぽんぽん投げ込まれる。最初は安い電子ピアノで子供は練習しているが、そのうちちゃんとしたスピネットに変わったり、ピアノの発表会が出て来たりする。

メールが映り出すと不穏な様相を示す。どうも妻が悪性リンパ腫にかかったらしい(メールだけではなく、検索でどういう病気か調べるところも映し出される)。でも治癒したようで、良かったと思いきや再発する。

おそらく子供のカレンダー(Google Calendarかな?)に、退院の日の予定が作成される。それが少しずつ後ろに移動されていく。そして予定そのものが削除される。なんということでしょう。

子供は高校生になったらしい。友達の家で勉強会をやっているので、facetime(アプリはあまり重要ではなく、別にSlackでもなんでも良いのだが)で父親とやり取りをしている。画面はいつの間にかMacになっている(2017年の映画なので、確かにXPは無いな)。

父親は、「お前のことを誇りに思うよ」といかにもアメリカンな締めの言葉を送った後に、「お母さんもそう思っているよ」と書いてから送信せずに削除する。まだ子供の心に傷が残っているから思い出させないようにしたのか、と考えるが、それも無くは無いだろうが、それだけではないと後でわかる。結局は妻の死から立ち直れていないということなのだ。

夜中に、電話とfacetimeの着信があることがロック画面に通知される。twillioではないだろうが、電話回線もMacに転送しているようだ。

子供は家に戻って来ない。実は家に一回戻っていることは、子供のMBAが置いてあることでわかる。facetimeに連絡するように書き込むが応答がない。長文で大文字だらけの問い詰めを書くが、送信せずに削除する。

この父親は、感情を表に出さない人なのだな、とわかる。

子供の学校の友人に聞くことにするために、連絡簿のようなものを探すのだが見当たらない。

家族のXPの母親のアカウントにログインすると、ノートンが未更新をどうにかしろと文句を垂れるので、長いこと使っていない(写真やビデオも放り込んでいない?)とわかる。連絡先から、一番の親友っぽい人を探して(ここにも情報があることは後でわかる)電話をかける。キャンプに行っているらしいことがわかる(これは実はガセだし、一番の親友でもなんでもないことが後からわかる)。

結局、警察に届けることになる。担当の刑事について検索して、表彰されたりボランティアしていたりとなかなか信頼できそうなことがわかる。

子供の交友関係を調べるためにMBAを開く。ログアウトしない設定(確かにMBAなら単に蓋を閉めてスリープさせて、開ければすぐに継続できるようにするのが普通なので不自然ではない)なので、Safariの履歴からFB、Twitterなどを順に開くのだが、IDはクッキーが覚えているのだが、すべて非公開となっているのでアカウント設定を変えようとしてパスワードを求められて(この子はKeychainに覚えさせていないのだろう。あるいは、Keychainアクセスでパスワードを求められて入力できないことまで映すと厄介過ぎるのでそこはスキップしたのかも知れない)、パスワードリセットメールの送信を要求する。送信先はGMailなので、GMailを開くと、当然パスワードを求められる。パスワードリセットを要求するとYahooメールに送信されたことが示される。

わかる。

Yahooメールは、XP時代(子供が子供時代)にアカウントを親が作ってやったのだろう。無事(思い出すために少しぶれがある、というような点までリアリティがあって凄い映画だ)、パスワードを入力してログインできてGMailのパスワードリセットメールを入手する。

といった具合に、細部の積み重ねが異様にリアリティに満ちていて抜群におもしろい。しかも、映像の切り替わりのテンポが良いのでまったくたるみがない。

この後も、父親は感情的な言葉を入力しようとして送信前に思いとどまる、が何度かあるのだが、ついに怒りが爆発して暴力沙汰を巻き起こす。

これが転機となり物事がすごい速さで進みだす。

それでも父親の削除癖は変わらない。

画像と動画を整理し、最も重要であろう、子供と二人で遊んで(撮影は妻だろう)子供から誕生日の絵(お父さん大好き! みたいなことが書いてあるやつ)を貰って二人で楽しそうにする動画を完全に削除する。

が、それに伴って不思議な発見をすることで、事件は急展開する。

最後、「お母さんもそう思っているよ」をためらった末に削除せずに送信する。心が成長したのだ。良かったね。

Search/サーチ (字幕版)(ジョン・チョー)

アマゾン評で★1評価があって、「この映画は古臭い。PCの画面なんてあり得ない。スマホに決まっているだろう」とか書いてあって、これは日本の映画ではないんだが、そこに気づかずに見ていたのか、と面白く思った。

世界で唯一、日本の子どものパソコン使用率が低下している


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