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日々の破片

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2021-04-30

_ ライティングソフトウェア

翔泳社の野村さんから1ヵ月前くらいにもらったライティングソフトウェア を 連休に読んでみるかと開いたら、想像しているものと違って驚いた。

タイトルからコードの本かと思ったら、全然違う。

そもそもよく見たら副題が「プロダクトとプロジェクトを泥沼から救う工学的手法」とかある。

さすがに、それはこけおどしだなという点も見られるが(リスクの計算のためにΣを持ち出して来て、それは確かにリスクは最初の時点からリリースした後までどんどこ積みあがるものだから正しくはあるけれど)そこで持ち出して来ているコストをリスクが上回る点を求める関数の正しさは保証できないのだから、現実的な正しさとはつながらない。

と書いてふと気づいたが、そういうレベルの話ではないのか。

そうではなく、説得力のある見積もりを提示するための基礎資料を作成する必要がある場合に、過去の類似プロジェクトなどから求めた数を適用させることで、コスト(プロジェクトに必要となる人員というよりもずばりお金)を引っ張るためのツールとしての式とグラフを示しているわけだな。

という点から、名前はライティングソフトウェアだが、(冒頭に戻るが)名前から類推される、クールなコードを書くために役立つ本ではなく、クールにプロジェクトを遂行するための道具立てを詳説した書籍なのだった。

扱っている範囲は、大きなソフトウェアアーキテクチャと、ソフトウェア開発プロジェクトの2つに分かれる。アーキテクチャが第1部で、プロジェクト管理が第2部となっている。第2部が第1部の倍の分量があるのが特徴だ。

第1部は、大きなシステムの分割設計についての考え方を示す。当然、大きなシステムは分割しなければ管理できない。

筆者は最初に機能別分割の弊害を詳細に詰めて行く(あくまでも大きなシステムを想定している点が重要)。

そうではなく、変動点に注目する。このアプローチは良いと思う。

第2部は、コストとリスクに注目したプロジェクト管理のためのデザイン方法となる。おそらくこの部分が、本書の白眉となる。この箇所が不要な人は本来は存在しないはずだが、一方で本書のレベルで必要となる人もそれほどはいないだろうという点まで踏み込んでいる。

付録に実際のプロジェクト運用などが書かれている。おもしろい。

で、ことそういう点から本書を見れば、まとまりかた、読みやすさ、ステップの追い方、ボキャブラリーの習得、そういった点で、教科書ではない一般的な技術書としてはあまり類がない存在に見える(というか、そういったものがおれのスコープ内だったときは見たことがない)。

手に取ってぱらぱら見るだけでも、そういった点からの価値はわかるし、それは逆な利用方法にも通じそうだ(机の上に置いてあったとして、誰かが何気なくパラパラ見ると、「こんな本を読んで勉強してるのか。こいつただものじゃないな」と思わせる――ろくでもない利用方法ではあるが)。

というか、読んだ限り本書は本気の、良いプロジェクト運用のための絵を書くための高速道路だ(ライティング・ソフトェアプロジェクトというべきだろうというか、原副題のA Method for System and Project Designが圧倒的に正しいというか、英語と日本語のSoftwareの違いなのかな)。もちろん第1部については、プロジェクト運用の絵とは関係ないし、ここから大局的な設計(それをソフトウェアアーキテクチャと呼ぶわけだが)の1つの良い観点は得られる。

結論すると、当然、日本のSIならば読んだほうが得な人は多い。自分のロールや目標とするロールが合致する人は連休中の勉強用にお勧めする。

ライティングソフトウェア(Juval Löwy)


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