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母親がこれむちゃくちゃおもしろいといって100万ドルを取り返せを貸してくれたのが半世紀前のことだから、どれだけ人気の息の長い作家なのかと驚くべきだが、ジェフリーアーチャー原作(多分読んだはずだが全く記憶にない)のケインとアベルに子供が誘ってくれたのでシアターオーブ。
百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)(ジェフリー アーチャー)
多分最初に読んだコンゲームの作品
確かどえらい大河小説だった記憶があるのだが、休憩入れて3時間にまとめあげた脚本家の手腕がまずすごい。語り手をアベルの娘(とは知らずに見ていたので2幕での早変わり(服が変わるわけではなかったようだが、ナレーターという特殊な立ち位置から舞台の中の演劇空間にすっと入り込むところ)の演出もうまい。
ただ、脚本はもろ手をあげて褒められるかというとそうでもなくて、無理やりアベルの子供時代(ポーランド貴族の息子(最初は庶子、途中から下男、途中から養子))の敵である侵略者をロシア(第一次世界大戦中なのでソ連ではない)にしたせいで、たかだかミドルティーンの子供がユーラシア大陸を横断して脱出したことになる(セリフでシベリアにいたことになっている)のが無理し過ぎなうえに、そのせいで、なぜかアベルが第二次世界大戦に参戦する理由が、欧州から逃亡する羽目になった恨み骨髄のソ連と戦うためという設定で、同じ連合国なのに何を血迷っている? という無茶ぶりがひど過ぎて、さすがにこれはひどい。
ポーランド侵攻やアメリカの対戦相手をドイツにどうしてもしたくない、どういう理由があるのか全く理解できないのが大問題。
が、それを除けば、役者/歌手(特にアベルに重点がある)や良いし、ワイルドホーンの曲も気にならないし、物語そのものはおもしろいので実に楽しめた。
ただ、舞台がアメリカなせいか、同じ1900年生まれの二人の男の対立の物語としてはベルトルッチの1900年をまた観たくなって、多分、おれはこっちのほうが好きなようだ。ケインとアベルはホテル王対銀行家だが、1900年は大地主対農民革命家という偉い違いがあって、多分、資本家同士討ちよりも階級闘争のほうが闘争のダイナミズムが大きいだけに好きなのだろう。
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