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日々の破片

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2013-08-04

_ 1950年代初頭の立川高校

そういえば、立高に入って驚いた。と、父親が話し始める。

何しろ、立川高校なのに、立川の中学から入って来たのは3人くらいしかいなかった。と言って数え始める。うん、確かに3人くらいだ。立川高校なのに、立川の連中が全然いなくてとにかく驚いた。

そのころはまだ学校群もグループ選抜も無かったからかな? と聞く。今もそういえばなくなったんだっけ。

立高には三多摩全体から来るんだよ。多かったのは何しろ五日市と拝島あたりだ。あのあたりは昔から進取独立の気概が高かったら優秀な連中がたくさんいたんだな。

特に五日市は五日市憲法とか作るような連中の子弟が住んでいたんだから、そりゃ優秀だ。

そういえば、と話を合わせるために歴史の知識を引っ張り出して、秩父(秩父困民党)のあたりから三多摩(三多摩自由党)は自由民権運動の牙城だったんだっけ? と聞く。なぜなんだろう。

それは天領だったからだよ、とすぐに答えが返って来た。天領は代官はいるが、逆に言えば代官しかいない。そこに土地を持って暮らしている連中の自治みたいなもんだ。しかも、ここは天領だという意識がある。おまけに天領は天領でも将軍家のお膝元だ。

天領だっていうのは、そんなに自負心を持つものなのかな?

今となってはわからないだろうが、そうなんだな。だから、新撰組の連中とかが、幕府の一大事となると自分たちで率先して京都へ行ったりしたわけだ。土方とかこのあたりに住んでたんじゃなかったっけ? 新撰組はあまり賢いとは言えないが、あれが天領の意識だ。

ああ、それで昔、と思い出して、土方歳三の家にあったとかいう怪しげな石灯籠を爺さんが買ったりしていたのか。このあたりに住んでいたから、そういう能書きを付けてもそれなりに本当くさいってことなんだな。

そういうおれたちは天領の百姓だという気概の持ち主から見れば、薩摩や長州の田舎者が好き勝手をしているとなればおもしろいわけがない。かと言って、進取の気概もあるので今更幕府でもない。そこで自由民権運動に向かったってことなんだろう。

というような理由だと思うが、とにかく五日市と拝島には優秀なやつがごろごろしていたわけだ。で、場所は立川だから立高だが、中身は全然立川じゃなかった。

でも、と思い出しながら言う。五日市はあきる野市だし、拝島は昭島で、どちらも今じゃぱっとしないけどな。立川は明治政府が人工的に作った町(長岡ではなく新潟、会津ではなく福島とかの小型版か)みたいだけど、鉄道と駅の整備、それに伴う宅地の造営と地方流入による新興住民の増加政策で気概のような文化を破壊できるということなのかもね。

# 五日市鉄道が五日市-拝島間で大正年間に開通して、昭和になってから立川に繋がったというのは何となく知っていたが、五日市と拝島は鉄道の両端点になる存在だったのだな。


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