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日々の破片

著作一覧

2013-08-06

_ 本所おけら長屋

時々行くカレー屋のカウンターに腰かけたら、目の前にブックスタンドがあり、文庫が6冊ほど並んでいる。全部同じ文庫だ。

背表紙に本所と長屋という字が見えたので興味を惹かれた。

すると店の主が、おいらの友人の本だってぇから並べてるんだ、という。

別にそれはどうでも良いが、ちょうど暇だったので売り物か? と尋ねるとそうだという。というわけで買った。サインが入ってるじゃん(別にいらんけど)。

本所おけら長屋 (PHP文芸文庫)(畠山 健二)

で、読んだ。本所は隅田川の向う側の長屋に住む大家、腕が滅法たつ浪人、商家の奉公人、職人、謎の未亡人(と書くと現代ものになってしまうのが不思議だ。謎の後家さんと書けば良いのか)が、繰り広げる人情話の短編集。しまった。人情話は嫌いだ。

でも、考えてみれば、深夜食堂とか読んで、すごくはおもしろくはないけれど、それなりに楽しめる程度には、人情話も嫌いではないと気付き、落ち着いて読めば、なかなかおもしろい。ところどころ言葉遣いに引っかかるが、別段気になるほどでもなく、むしろ読みやすい。趣向もそれなりにこらしてあり、長屋の住人それぞれの人生がさらっと流れて悪かない。

あと、心の底からの極悪人というのは話の中には出てきても、直接は登場しないので、後味が悪くない。まあ、こういうのも良いものだ。

というわけで、適当に気がまぎれて、あっさりと読めて、後味も良いので、まあ、読んで損はまったくしなかった。


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