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日々の破片

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2017-04-09

_ 新国立劇場のオテロ

新国立劇場でオテロ。多分、観るのは3回めになる水の都と二重写しのキプロス演出。

冒頭、すさまじいオーケストラの音量と速度で度肝を抜かれる。が、そのあとの合唱が小さい。

あまりのオーケストラの迫力にすごい指揮(パオロカリニャーニ)だなぁと思いながら聴いていたが、どうも違うんじゃないか? とクレドのときに気づく。

イヤーゴのウラジミールストヤノフは、立ち居振る舞いは断然かっこいいし、声も良い、強烈な陰謀家らしい良いイヤーゴなのに、なぜかクレドがあまり聴き取れない。歌い終わったあとのポーズもかっこいいのだが。

舞台下のオーケストラと舞台上の声のバランスが取れていないのじゃないか? という気がしてくる。

花道のような仕組みで、左側を凱旋してきたり、イヤーゴとオテロが舞台に入ってきたりするのは今回初めて知った(前は4階から見ていたのかもしれないが、今回は3階奥で舞台がよく見える)。

幕間終わった3幕から、音量がえらく変わって、合唱や独唱とのバランスが良くなった。どうも、初日ということもあって、1幕2幕は音量のバランス調整に失敗していたようだ。しかし、今度はいささか小さくなり過ぎて迫力がなくなったような(が、3幕以降はオテロの異常な心理に焦点が当たるから大音量が必要なわけでもなく、これで良いのかも知れない)。

演出をよく見ていると、イヤーゴが塔になんの意味があるのかバケツの水をかぶせたりいろいろしているが、どうも塔を回転させるための合図のようだと気づいたり、なかなかおもしろい。

セレーナフィルノッキアのデズデモーナは、自然に揺れる倍音が多い声で、歌唱法も合わせてフリットリみたいだなと思いながら聴いていたが、ここぞというところで豊かには響かない。声はおもしろい楽器だ。その点でいまひとつ感がある。カーテンコールのときに良く見たら顔や体型もフリットリみたいで、そういうタイプの声顔姿の歌手(=楽器)なんだなぁとか考える。

カルロヴェントレはもう何回観ただろうか。立派な歌手だ。

清水華澄のエミーリアは寸言人をさすエミーリアっぽくて印象的(あまり歌がないのだが、歌うときは常に重要な妙な役回りだ)で、カッシオの与儀巧は良いカッシオだった。カッシオは軽薄才子っぽいわりには、ロデリーゴ返り討ちとか実は腕もたつ(か、ロデリーゴは本当に無能なのかどちらかだ)、良きローマ人の若大将の典型みたいな印象なのだが、いかにもそういう声と振る舞い。3幕で呼ばれて登場してくるところとかなかなかかっこよい。演出はイヤーゴに顕著だが、個々の歌手に大見得を切らさせることを重視したかのようだ。

ふと気づいたが、オテロがベネツィアに召喚されるというのは実際にそう指令書に書かれていたのではなく、デズデモーナとカッシオの動揺をチェックするためにオテロが考えた即興なのではなかろうか。

1幕の音量はともかくとしてテンポの良さはずっと持続して気分良い舞台だった。

カーテンコールでは、指揮者と合唱指揮者が手をつなぐ。なんとなく、この形になるのは好きだ。


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