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日々の破片

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2021-11-13

_ さかさ銀杏

甲州から身延山へ向かう途中で、史跡「さかさ銀杏」というのを見かけて、妻にあれなんだろう? と聞いたら調べてくれた。

さかさ銀杏は別名お葉付き銀杏とも呼ばれとか読み始めたが、一般論ではなく史跡のさかさ銀杏ってなんだろう? と聞き直すと、調べ直してくれて書いてある内容を換骨奪胎の日蓮話となった。

密教の坊さんが日蓮に論破されたのを恨みに思って、身延山麓の密教寺に日蓮を和解だかありがたいご高説をうかがうだか理由をつけて呼びつけた。

陰謀があるとも知らずにのこのこ出かける日蓮。

さあさあ山の上からわざわざどうもどうも、まずは団子でも食ってくれ。

と毒入り団子を日蓮に差し出す密教の坊さん。

おお、ありがたや、と食おうと大口を開けた日蓮だが、庭に痩せ犬が物欲しそうにこちらを見ていることに気付いた。

おれよりお前のほうが腹ペコみたいだなと日蓮、手にした団子を犬に放ると、犬はさっそくむしゃぶりつく。が、突如、顔色を真っ黒にして泡を吹いて死んでしまった。

こはいかに? と慄く日蓮。

が、それより慄いたのは密教の坊さんたちで、これもまた日蓮上人の法力、仏が犬に化けて我らが謀を止めたに違いないと、日蓮に平伏してあらいざらい白状した。

まあ済んだものはしょうもあるまいと、日蓮と密教の坊さんたちは犬を埋めて南無妙法蓮華経を唱えた。密教の坊さんも南無妙法蓮華経を唱和せざるを得ない。

その埋めたところに日蓮、身延山からついてきた杖を挿し墓標とせんとするとこはいかに、杖から新芽が出て来てみるみる銀杏の大樹となり、土を覆うように枝が下を向く。

ことここに至っては日蓮の法力あまりに明らかであると密教の坊さんたちも大悟し、日蓮の軍門に下った。

そこまで調べたことを教えてくれた妻が、日蓮は当然そうだが密教の坊さんたちも、本気で仏が好きなんだな、仏オタクか。とか言い出して、確かにそうだなぁと。

で身延山を見てから、話はわかったからさかさ銀杏は観なくても良いかなぁとか言いながら通り過ぎようと思ったが、道路に史跡を示す道標があればつい立ち寄ってしまうのはしょうがない。

で、見てびっくり、すさまじい銀杏の巨木だ。

文部省が実を取るな、これは珍しいんだぞ、と書いた看板が立っている。

お葉付き銀杏

脇のほうには忠魂碑があって、寺名を見ると本國寺で、なんか昨日の話の寺と名前が違うみたいだな? とか不思議にも思う。

で、堪能して再び車に戻って進むと、「さかさ銀杏」という史跡標識が出て来て、あれさっきのは一体なんだったんだ? と顔を見合わせてあらためてそちらにも寄ってみた。

で、そちらの寺(上沢寺)には駐車場に来歴があって(上の話と異なり、陰謀を喝破した日蓮が通りすがりの犬に毒見をさせたことになっていて、いかにも政治家日蓮の面目躍如だが、ありがたみは乏しい)、一体どういうことだ? と顔を見合わせる。

でうも、お葉付き銀杏はこのあたりに群生(というほどたくさんではない)しているのかも知れない。

こちらの銀杏は台風で倒れたとのことで、まるで巨竜が盤踞するようで(脇に俗っぽい日蓮の巨大な石像まであるのは御愛想として)また別の趣があっておもしろかった。


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